ぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつ。
「ディオニュソス、これ本当にコーラの素ができるのか? これで合ってるのか?」
1時間後。
鍋の中は、水分がなくなってきてる気がする。
なんかちょっと違う気がする。
絶対に失敗してる気がする。
「ううううーんどうだろうか」と笑顔でアポロンに返す。「でもほらコーラって黒色じゃん? 黒色になるまで煮込まないと、ダメなんじゃん? ていうかアポロン! 君も手伝いなさいよ! コーラ作りの神になりたいのならその手腕を見せないと、ダメじゃん!」
「ふむ、理にかなっているな。よし、俺の腕を見せてやろう」
そう、そもそもコーラの神になりたいやつが見てるだけっておかしいじゃん! 俺は遂にアポロンに引導を渡した。
アポロンは腕まくりをして、そして、お鍋の火をいきなり超強火にした。
オイオイオイ、それ以上水分飛ばしてどうするんだよジャム作りかよ絶対間違ってるんだよオイオイオイ。
「コーラ作り以前に俺が手にしたい権能があって」
オイオイオイまた語り始めたよコイツ。俺は無視して計量カップいっぱいに水を汲んで横から鍋に流し込む。
「俺は、もっと包括的な概念を手に入れたくて。そう、概念」
ぢゅおおおおん、と水が蒸発していく。マジかよ。え、これを炭酸で割るの? え、何これ?
「俺が手にしたい権能、それは……ときめきだ」
「ときめき」
アポロンは真顔で、鍋掴みで取っ手を掴み、鍋をゆすり始めた。鍋の中の物体Xがネッチャネッチャと転がっている。なんか粉吹いてる。
「今の目標は、ときめきという概念を司る神になりたい。コーラ作りもその一環だ。生きとし生ける者すべてがこのアポロンにときめきを感じる、そんな神になりたい。俺は、ときめき神になりたい!」
「アポロンどいて! 俺が引き受けるわ!」我慢ならずに鍋をひったくって火を消した。
「何ィ!? お前もときめき神の座を狙っていたのか!?」
俺はアポロンが何を言ってるのか分からないまま鍋の黒い物体を見つめて素直に謝った。
「ごめんアポロン……こんなはずじゃなかったんだ……」
精一杯申し訳無さそうな表情を作って謝ると、こんな時にもアポロンは真顔で、でも少し悲しそうな眉の形で、無言で炭酸水メーカーにボトルをセットし、ボタンを押した。プシューッと勢い良く炭酸水が注がれる。そして、黒色の物体を、スプーンで、アイスをくりぬくみたいにネチョっとちぎり、コップの中にべちょっと投げ、そして炭酸水を注いだ。カラカラカラとマドラーで混ぜるも、物体は濃密すぎて溶けない。
「ディオニュソス」
アポロンは真顔で語りかけてくる。
「お前は俺の弟で、ライバルで、友だ。お前の間違いには叱るし、お前の謝罪はいつだって受け入れる。だが――俺がずっと構想していたときめき神の座は譲らないからな!
うわっ何だこれまっず!! え何これ!! 何だこれ!?」
「飲みやがった! だからごめんって言ったじゃん!」
さて、お鍋の中の香辛料の煮こごりは、トマト缶とヨーグルト、そして幾ばくかの野菜や肉を放り込んだところ、とても美味しいスパイスカレーになりました。使いようのない出来損ないが産まれても、輝く道はあるようです。
アポロンはスパイスカレーを食べ「これはこれでときめく」と真顔で呟いていた。

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