
アポロン
ギリシア神話の理性担当。

ディオニュソス
ギリシア神話の狂乱担当。
「アポロンって何型?」
「……はあ?」
「血液型だよ。何型?」
「……知らん」
「医者なのに?」
「俺は確かに医神だが、じゃあ聞くが神が自分の血液型を知ってどうする? 輸血する機会でもあるのか?」
成程。道理だな。しかしここで話を終わらせてしまっては折角面白いネタを拾ってきた俺が可哀想!
「じゃあこのディオニュソスが当ててやろう! 君の血液型は、Aだ!」
「…………ふーん」
ヤバいコイツビックリするほど興味無さ気! 手指の爪のササクレ取り始めやがった! 俺ピンチ!「じゃ、じゃあ俺ってなんだと思う!? A!? B!? CDE!?」
「血液型の4タイプはA・B・O・ABと人間達が名づけていたぞ。CもDもEも存在しない。なんだお前、さっきから。血液に興味あるのか?」
「ふっふっふー、やっとノってきたー!」
俺は懐から本を取り出した。
「ばーん! 血液型占いハンドブックー!」
「……あ?」
「こないだ大陸の東の果ての島国に行って見つけたのさ。お土産」
「へえ……」
アポロンは俺からひょいっと本を奪い、パラリパラリとページを捲っていく。
「血液型ごとに性格がわかれるんだと。Aは神経質、Bは我儘、Oは大雑把、ABは……」
「しょうもないお遊びだな」
ポンッと本を閉じて俺に返してきた。
「……まあまあ、たかが人間ですから」
「肉体の遺伝的性質による心的特徴の決定、という着眼点はいいだろう。精神と肉体は一体だからな。しかし、その精神を形づくる作用は外的要因によるものが大変大きい。勿論それは肉体の方にも当てはまる。つまり、たった血液型だけでひとの性格を決めつけようだなんて不可能だ。下らない」
「暇潰しくらいにはなるじゃない。それに、これはどちらかというと占いと言うよりもコミュニケーションの道具らしいよ」
「自己をこの4パターンのうちのどれかにカテゴライズして安心したいんだろう。反対に指定されたパターンと違う自己を発見した時それをオリジナリティと勘違いする。安っぽい性格診断の結果で自己を理解できたと思い込むんだ。自己と向き合う時に表れる感情は恐怖。その恐怖を誤魔化してるんだろうな。だから俺はこう説いているだろう『汝自身を知れ』と」
うわ本気で叩いてるよコイツ。論破大好きな生粋のギリシアっ子が。
「『星座占い』なんかも好きらしいよ、あの国の人間は。そんで、さっきの血液型のやつと一緒に一日の運勢を占うんだって。面白いの、これを朝のTVで放送してるの」
「運勢なぁ……」
「『本日のワースト1は蠍座のアナタ! 今日は何をやってもダメみたい。集団行動ではでしゃばりすぎに要注意! カレにも嫌われちゃうかもよ?
ラッキーアイテムは茶色いベルトの腕時計、ラッキードリンクはコーラ、ラッキープレイスは駅の近くの文房具屋さん!』
……こんな感じ」
アポロンは腕組みをして至極真面目な顔をして、一言。
「茶色いベルトの腕時計を持ってなくて炭酸飲料が飲めなくて駅の近くに文房具屋がなくて集団内ででしゃばらざるを得ないような役職の人間ならどうすればいいんだろうな。お先真っ暗じゃないか……。俺はこんな予言を朝から告げられたらショックで一日のやる気をなくすだろうな。問答無用で恋人にも嫌われるのだぞ?」
コイツ真剣だ! アホだ! マジでアホだ!
俺は続けてプリントを取り出した。
「こんなのもあるらしいよ! 動物占いだって。ネットで見つけて刷ってみた」
「沢山あるんだなぁ」
「これは12種類の動物。えーと何々、あ、俺これがいい! ペガサス! 『ペガサスのアナタは気まぐれで浮世離れした天才肌です。ペガサスは、12匹の動物の中で唯一の空想の動物で……』」
「…………」
「…………」
「…………空想?」
「いや、いるよね、ペガサス」
「いるな、ポセイドンとこに」
「空想ではないよね。だっているし」
「こないだペガサス連れて散歩してたぞあのオッサン」
「それにさ、この絵では超美化されてるけど実際は全然可愛くないよねあの馬」
「どちらかと言えば凶暴で不細工だよな。アルテミスが前にペガサスに翼で叩かれて泣いてたわ」
「そっかー、ペガサスは空想の生き物かー」
「面白いな、人間」
「発想が豊かだねー」
「ペガサスがそんな扱いされてるんなら、俺達も空想上の存在って事になってるんじゃないか?」
「あー有り得るー。それはそれで切ないかも」
「なぁ、切ないよなぁ」
「じゃあもっと頻繁に降臨して自己アピールしなきゃだね」
「『ここにいますんで! 神、いますんで!』ってか?」
「世知辛い世の中だなぁー」
「…………で、なんの話だ、これ」
「……なんだったっけぇ?」

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